おしらせ&コラム
2024.7.1
製造業の研修で取り組むべきこととは?課題や実例も紹介
「製造業の研修がなかなか上手く進まない……」
「研修ってどのようにやるものなの?」
「実際の例が知りたい!」
そのようなことでお困りではありませんか?
この記事では、
・研修の課題
・製造業が取り組むべき研修
・研修の実例
を紹介していきます。
ぜひ、最後までご覧ください。
製造業における研修の課題
製造業の研修には独自の課題があります。
その中でも特に重要な課題を以下に示します。
若手への技術伝承不足
製造業は長年にわたり蓄積された技術やノウハウを重視していますが、その技術やノウハウをベテラン社員から若手社員へ継承できていない課題があります。
若手への技術伝承が上手くいかないと、企業独自の技術やノウハウが失われ、企業の存続にも関わる可能性も。
時間・人材の制約
製造業は常に生産性とコスト管理に注力しており、研修に割ける時間や予算には厳しい制約があります。
さらに人手不足によって、1人当たりの業務量が増えて指導・教育に充てる人材が確保できていないことも課題です。
多様性への配慮・対応
製造業では、外国人の労働者も多く見受けられます。
他にも障害を持つ方、女性など、多様な人が働いている現場があるでしょう。
製造業で働く全ての人のためにも、性別、人種、文化的背景の多様性を積極的に取り入れ、それに対応する研修プログラムを確立する必要があります。
しかし、まだ一人ひとりに合った研修体制が整っていないことが現状です。
OJTへの依存
OJT(On the Job Training)とは、先輩や上司が、現場での実務を通じて業務の知識やノウハウを身につけさせる人材育成の手法を指します。
OJTには個人に合わせた指導ができたり、コミュニケーションを活性化できたりするというメリットがありますが、OJTに依存すると、体系的な知識を得にくいことや、教育の質が担当者によってばらつきやすいことも。
同じ工場内でも教育内容のばらつきがあると、品質や生産効率に影響が出るリスクが生じるため、OJTに依存しない教育が必要になります。
非正規社員への教育不足
ものづくり白書によると、OJTの実施状態は正社員への割合が2022年度時点で60%を超えているのに対して、非正規社員への割合は20%台と低く、非正規社員への教育投資が相対的に低いことが分かります。1)
正社員、非正規社員の両方への研修を実施できるかが課題です。
1)2024年版ものづくり白書(経済産業省)より
技術の急速な変化への対応
製造業は特に技術の進化が速い業界の1つです。
新しい機械や自動化システムの導入などが頻繁におこなわれ、それに対応するための社員の教育が急務になっています。
しかし、技術の変化に追いつくだけの研修プログラムを提供することが難しいという課題があります。
製造業が取り組むべき研修4選
では、製造業ではどのように研修を実施するのが望ましいのでしょうか。
以下に4つ提示します。
①役職やニーズに合わせた研修
製造業における従業員は役職やスキルレベルに応じて異なるニーズを持っています。
これらに応じた研修を実施することにより、段階的にスキルや学びを身につけることができます。
それぞれの段階で取り組むべき研修をまとめました。
新入社員
・社会の常識としてのマナー、礼儀などを指導する研修
・工場内でのルールや仕組みについて解説する研修
中堅社員
・キャリアデザイン研修
・先輩・後輩との人間関係に関する研修
管理職・リーダー
・製造業の潮流や最新状況を学ぶ研修
・ハラスメント対策研修
このような研修はOJTだけで実施することはできません。
状況に合わせて、職場や業務から離れて実施される研修や学習であるOFF-JT(Off-the-Job Training)を取り入れるとよいでしょう。
②実践的なトレーニングを取り入れた研修
製造業では、理論的な知識だけでなく実地での技術習得が不可欠です。
そのためにも、実践的に技術を学ぶことのできる教育体制を構築することが大切です。
実際の作業場でのシミュレーションや実際の操作によるトレーニングは、社員がリアルな状況でのスキルを磨く機会になります。
特に未経験の新入社員に対しては、この実践的なトレーニングを充実させて、実際の業務でミスのないよう指導していく必要があるでしょう。
このような実践的なアプローチは、学習の効果を最大化し、企業の生産性向上に大きく貢献します。
③多様性を促進する研修
製造業では、性別、人種、障害の有無、文化的背景などの多様性を尊重し、それぞれの個性を生かした労働環境の整備が求められます。
例えば、多様性の重要性について教育する研修をおこなうとよいでしょう。
これにより、多様性への理解と尊重が促進され、差別や偏見のない職場文化が築かれます。
多様性を生かしたチーム編成やキャリアパスの公平性の確保など、多様性を大切にする職場づくりを実施していく必要があります。
また動画を使い、外国にルーツをもつ方に対して母国語での教育をするなどして、教育のバラつきをなくしていくとよいでしょう。
④技術革新への迅速な対応
製造業は常に技術革新の最前線にあります。
社員が最新の技術やシステムに迅速に対応できるようにするためにも、技術やシステムに慣れていくための研修が必要です。
これにより、企業は技術の進歩に適応し、競争力を維持できるのです。
製造業が取り入れている研修の実例
ここでは、製造業の企業が取り入れている研修について、実際の例を紹介します。
なお、ここに記載しているのは、経済産業省の『ものづくり産業における人材の確保と育成に関する課題と対応』より抜粋したものです。
文系出身者や未経験者への研修 A社
A社は機械設計や電気、ソフトウェア開発などの業務を、派遣・請負の形でおこなう企業です。
この会社では、業界の人手不足が深刻で理工系出身者の採用が困難であることから、職業訓練校の説明会や公的機関の就職イベントに多く参加し、新しい仕事に挑戦したい方との接点を多く作っています。
そのため、文系出身や未経験者の採用もあり、一から社員を育てているのです。
社長は「文系出身者や未経験者がついていけないということがないようにゆっくり、段階的に研修をおこなっている。イメージとして捉えやすい最新の3DCAD(コンピュータで製図をおこなうためのソフト)を使用することで、複雑な設計ができるようになっている。経験が45年以上のベテラン技術者が専任講師として後進を育てる役割を担っている。」と語っています。
A社では、月に2回、1回当たり5時間にも及ぶ資格取得研修も設けており、この研修を受講することで機械設計・製図に関連する知識が深まり、効率的な図面の作成につながっているそうです。
働きながら資格を取ることのできる環境づくりを整え、毎月の給与にも反映させることで、社員のモチベーションアップに貢献しています。2)
3社で連携して研修 B社
B社は板金加工事業を請け負っており、2014年から「つながる町工場プロジェクト」と称して、付き合いのある同業他社と連携し、3社一体の人材育成の取り組みをおこなっています。
この3社は若手社員を対象とした基礎技能研修、リーダー社員を対象とした現場改善研修、業務改善とIT活用に向けた技術交流会などを継続的に実施しているそうです。
あえて自社が持つ技術力の強み、弱みを開示することにより、新たな気づきにつながる体験をさせることができるとのこと。
3社の連携により、社員同士の交流が増え、お互いの技術力に刺激を受けながら、ものづくりの技術を高めようと切磋琢磨して人材育成にプラスになっているそうです。
現在では3社共同での生産をする取り組みもあるのだとか。3)
2)3)ものづくり産業における人材の確保と育成に関する課題と対応(経済産業省)
まとめ
製造業の研修は、業務を円滑におこなうためだけでなく、より働きやすい職場づくりをおこなうことにも必要です。
研修はただやればいいというものではなく、まず研修を通して何を学んでほしいのか、実施する側がはっきりさせなければなりません。
そして、学んだことを業務や職場の人間関係づくりにアウトプットさせることが大切になるのです。
あなたも自社の研修を見直してみてはいかがでしょうか。
Contact
お問い合わせ
ご相談・ご質問等ございましたら、
お気軽にお問い合わせください。
お問い合わせフォームはこちら
local_post_office お問い合わせ